会長挨拶

会長 西澤 茂

2012年4月26~28日に行われるSTROKE 2012(日本脳卒中学会、日本脳卒中の外科学会と合同開催)におきまして第28回スパズム・シンポジウム学術集会を開催させていただくことになりました。伝統あるこの会を主催させていただくことを大変光栄に存じております。

STROKE 2012 のメインテーマは「脳卒中医療-新たなbreakthrough をめざして-」です。第28回スパズム・シンポジウムにおきましては「脳血管攣縮におけるearly brain injury の意義」とさせていただきました。くも膜下出血(SAH)後のearly brain injury はまさしくこの分野における新たな breakthrough であると考えております。

SAHの治療に携わる脳神経外科医はSAH直後あるいは早期の神経所見でgrading を行い、このgrading が患者のfinal outcome に相関することを身にしみて感じています。しかし、これまでのスパズム研究、あるいは治療は、いわゆる「遅発性脳血管攣縮」にむけられてきました。しかし、近年の研究で、SAH 直後にはすでに広範に神経細胞障害がおこり、脳循環を調節する細血管に機能障害がおこっていることが明らかにされつつあります。まさしくこれが early brain injury であり、臨床ですでに知られていることが研究の立場からも支持される結果をとなってきました。しかし、このearly brain injury が果たしていわゆる遅発性脳血管攣縮にどのように関連するのか、連続した事象であるのか、あるいは全く別の現象であるのか、こうしたことがまったく明らかにされていません。

スパズムにおける研究、治療のbreakthrough はまさしく「early brain injury」のメカニズムを解明することにあるといえると思います。結果、いわゆる脳血管攣縮の定義すら根本的に見直さなければならないことになるかもしれません、また研究において用いられてきた動物モデルの正当性すら再考しなければならないかもしれません。

第28回スパズム・シンポジウム学術集会においては、新たなbreakthrough を目指して「脳血管攣縮における early brain injury の役割」に焦点をあて、基礎研究、臨床研究の成果を発表していただき、SAH 患者のbetter outcome を追求していきたいと考えております。

皆様から多数の演題の応募、および学会へのご参加をお待ちしております。

第28回スパズム・シンポジウム
会長 西澤 茂
産業医科大学医学部 脳神経外科学